矢崎:当社は、サッポログループの食品・飲料事業を担い、国内における食料品および清涼飲料水の製造販売を主に、カフェチェーンの運営や海外における飲料事業など国内外で広く事業展開をしています。“毎日の生活に彩りと輝きをくわえる、新しい『おいしい』を次々と生み出し続けます。”というビジョンを掲げ、レモン関連商品や缶コーヒーなど、これまでにないユニークな商品を開発し続けてきた企業です。
柳川:そのなかで私は、異動・研修を担当するチームに所属しています。現場主導での育成を方針としており、チューター制度を取り入れています。約30人の新入社員にはそれぞれ入社4~5年目の社員がつき、実践を通じた指導を行いながら当社が目指す『見つける力』『引き出す力』『発想する力』という3つの力を育てています。チューターは新入社員の育成方針を自分で考え、上司や周囲のメンバーも巻き込みながら部署全体で育成を実施するためのOJTリーダーとしての役割を担います。
矢崎:チューター制度は新入社員の育成のためであると同時に、チューター自身の成長の機会でもあります。単なるお世話係としてではなく、新入社員の将来を考え接するなかで人を育成する難しさや意義を感じてほしいと考えています。)
柳川:チューターは6月ごろに、人を育てる心構えや当社の目指す姿を理解するために研修を受けます。講義形式の座学に加え、実践的なワークを取り入れることで気づきを得られるように工夫し、研修中に自分自身で育成の軸を決めて今後の育成の計画を立案します。研修後も月に1度OJTレポートを作成し、それを基に自分が立てた計画に対しての実行度合いの確認や軌道修正を行えるように支援しています。チューターにとっては負担も大きい分、人を育てる意義を自分なりに感じてもらうことが大切だと考えています。
矢崎:半年ほどが経つと、新入社員もチューターもそれぞれ慣れてきて自立の時期を迎え始めます。このタイミングで順調に進んでいるところと、課題が発生しているところに分かれ始めるころです。入社2年目を迎える前に適切な軌道修正を行えるよう、12月に人事側でフォローアップ面談を実施し新入社員の本音を確認するようにしています。本当は私も直接話を聞きたいのですが、新入社員の本音を確認するために、より立場の近い柳川ら中堅に任せています。
柳川:新入社員との面談では、ざっくばらんな雰囲気のなかで普段の業務内容や周囲とのコミュニケーション、エンゲージメントの状態などを確認しています。面談を実施していると上司から聞いていた状態と、新入社員の本音の間にギャップが出るということが時々あります。現場に赴いた際には「前向きに頑張ってくれているよ」と上司から聞いていたのですが、実際には心身ともに一杯いっぱいな状態だと話を聞くこともありました。このギャップを認識させることは重要な気づきにつながるのですが、面談の情報は非常にセンシティブで定性的な内容です。上司にフィードバックすることは難しいなか、どうすればもっとうまく改善につなげることができるだろうかと悩んでいました。
矢崎:ギャップがあるから、上司やチューターが悪いということでは決してないのです。ギャップの存在に早く気づくことは、改善のきっかけになるはずです。ですので、こういったギャップの情報を建設的に活用し、具体的な行動につながるように支援したいと考えていました。
私はもともと企画の仕事についていたので定量・定性の両面から振り返りを行い、改善策を見出すことに慣れています。人事に異動になったときに、定量的に施策の良し悪しを振り返ることができない点にもやもやとする部分があり、ここには伸び代があると感じました。もちろん、人や組織の問題は中長期で成果を測るべきであり、1つの指標だけを見て単純な判断をすることはできない領域です。しかしながら変化のスピードが速いこの時代においては、人事施策のPDCAサイクルもよりスピード感を持つ必要があると考えています。これまでの人事施策では、どのように育てるかというPlanや現場が適切に運用されるよう支援するDoの部分は力を入れることができていたと思います。一方で、定性的な領域である分Checkが機能しづらく、次回以降に向けたActionにつながりづらいという側面があったのではないかと思います。
これまで取得してきた情報に加え、客観的な指標をより増やし併せて活用していけば、立体的に現状を捉えられるためCheck機能が強化され、次にActionすべき点が早期に発見されるのではないかと期待しました。