坂本:新入社員の入社後のフォローには、これまでも取り組んできました。入社3年目の終盤にアンケートを行い「仕事のやりがい」や「上司との関係性」などを調査しています。そのアンケートの回答をもとに、所属する社内カンパニー・事業部の人事と面談するという取り組みです。ただし、3年目の終わりのみに実施するアンケートであるため、回答に至るまでのプロセスを把握するのは難しく、3年目だけではなく1年目、2年目などもっと高頻度でやらなくていいのかという疑問もありました。
課題はありつつも、入社3年目向けのアンケートには有用な情報が含まれています。自由記述のコメントから、やりがいを感じている社員とそうでない社員、それぞれ頻出ワードがみつかりました。「仕事を任されている」「権限がある」というのは、やりがいを感じている社員から出てくる言葉です。一方で、やりがいを感じていない社員は「まだ仕事を任せてもらえていない」「権限がない」など、現状を否定的に捉えがちだということが見えてきました。
また、3年目時点で「仕事のやりがい」を感じられているかどうかは、「配属が希望通りだったか」という項目よりも、「上司の働きかけ」に関する項目の方が、影響が大きいことも分かりました。もちろん、配属は本人の希望を踏まえて真剣に考えて決めるべきであり、当社では新卒でも一部事業別や職種別のコースを設けたり、本人への希望聴取も複数回行ったりなどミスマッチのないように努めています。その一方で、仮に希望通りの配属だったとしても、上司との関わりによってはやりがいを感じられないし、逆にもともとの希望とは違う配属だったとしても、上司による動機付けや本人のWILLに関する対話がきちんと行われていれば、大きなやりがいを感じることもあると分かりました。こういったことは、定量的なアンケートだからこそ正確に得られる情報だと思っています。
志鶴:より高頻度で新入社員のコンディションを把握するために、短期間で状況把握を繰り返すパルスサーベイの導入を検討しました。当社では、以前から中途採用社員の立ち上がり(オンボーディング)においては、サーベイを活用してきましたので、その効果には強い期待がありました。月1回などのペースで定点観測すると、急激なモチベーション低下などの異変をキャッチできることもあります。新人・若手向けにもこういったサーベイを活用すれば、3年目のアンケートよりも早い時期に、心の揺らぎをキャッチし現場でフォローできるのではないかと考えました。
今回の施策で、上司に対して部下の本音と価値観をフィードバックするサーベイ・INSIDESを選択したのは、より具体的なアクションにつなげるための機能が充実していたからです。ただ可視化して数値を出力するのではなく、その内容を自動で分析して、適切な行動を提案するレポートが出力されます。先のアンケート分析からも、上司によるコミュニケーションを支援することは、新入社員の働きがいを高めるために非常に重要であるため、INSIDESをパルスサーベイとして活用することで高い効果を発揮するのではないかと期待できました。
サーベイの運用は検証の意味も兼ねて、2週間に1回、1カ月に1回、2カ月に1回など、社内カンパニーごとに頻度を変えて実施することにしました。対象は入社1年目の850名。その運用のなかで、「サーベイの頻度はどのくらいが適切なのか」「どうしたら現場の上司をうまく巻き込めるのか」、そして「現場の上司からのフォローが改善することで、メンバーのコンディションはどう改善するのか」という3つの観点から検証しました。上司や本人の行動変容などを踏まえ、サーベイを活用したフォローをしています。