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INSIDES導入でマネジャーの部下との関わり方が大きく変わり離職率が激減

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背景・課題

若手社員の「びっくり離職」が多く、組織のあちらこちらが困っていた

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私たち日本SPセンターは、広告・販促のマーケティングリサーチから戦略立案、コンテンツ制作、運用改善と最適化まで、一貫して行うマーケティング&クリエイティブエージェンシーです。社員数は150名前後。実は、私はまさに150名規模の会社で、働きがいのある組織づくりをしてみたい、一人ひとりが自分の良さを生かしながら働ける職場をつくってみたい、と思っていました。そのときに出会ったのが日本SPセンターだったのです。

私が2020年に入社した時点では、会社に対して「もったいない」と感じるところがいくつかありました。当時から、社員の多くは誠実かつ仕事熱心で自分の技術を磨くこと、学ぶことが好きでしたし、お客様の期待に応えようと頑張っていました。十分に魅力ある会社ではあったのです。

しかし一方で、組織づくりや人材育成の面ではまだまだ成熟しておらず、改善すべき点がいくつもありました。例えば、社員の働きがいや働きやすさをもっと大切にした方がよいと感じましたし、研修を実践につなげることも課題の1つでした。経営と人事の距離を縮めて、お互いの信頼関係を築く必要もありました。感覚的な議論に終始するのではなく、客観的な指標を設け、科学的な意思決定を増やすことも急務でした。何よりも、マネジャーと部下のコミュニケーションの質と量をもっと高める必要がありました。

組織の現状を端的に示していたのが、高い離職率でした。私が入社した当初は、若手社員の「びっくり離職」が多く、イキイキ働いているようにみえた若手社員がいきなり辞めてしまって、組織のあちらこちらが困っている状態でした。

2020年の冬、私は以上の現状を踏まえて、働きがいのある組織をつくるため、社員が幸せになれる会社をつくるために、変革の第一歩を踏み出しました。

現場マネジャーの声

株式会社日本SPセンター
4BU チーム長 前島 一仁 様

最初にINSIDESというサーベイが導入されると聞いたとき、「そういう時代なので必要か……」と思いつつも、正直なところでは「受け入れたくないな」「現場レベルではどうにもできないよ」という気持ちも強くありました。

私の世代(取材当時40代前半)は「苦労は買ってでもしろ」と言われて育ってきましたし、つらいことがあったとしてもケアされることなんてありませんでした。採用も、そんなに強化しなくても人が来るような時代もありました。なので、部下をケアする、という考えが分かるようでよく分からない、といった感覚もあります。

ただ、少しずつチームメンバーが入れ替わるなかで、自分とは年も価値観も異なるメンバーが増えていきましたし、採用も難しい世のなかになって、逆に転職して出ていく人も増えました。そんな世のなかだからか、INSIDESのような「メンバーのコンディションを可視化する」というサービスが流行っているのは知っていたので、それがうちにも導入されると聞いたときは、特に大きな感情もなかったのですが「時代だな」と思ったのです。

実は、導入されたタイミングは、ちょうど私のチームのコンディションが芳しくないときでした。当然、サーベイの結果には「窮々」とか「悶々」とか悪い結果が並びます。
状態が悪いことは私も自覚していたので、結果を見たときには「まぁ、そのとおりだな」と。一方で「だからといってどうしようもないな」とも思いました。新しく人事で入ってきた久嶋さんがいろいろと頑張っているなとは思っていましたが、「受け入れたくない」という気持ちもあったのです。
そして、そのあと「窮々」や「悶々」といった人たちは退職していきました。

ただ、INSIDESの結果を見るなかで、徐々にではありますが私のマネジメントに対する考え方も変化するところがありました。今までだったら意識して考えることのなかったメンバーの心理状況というものを、定期的なタイミングで触れることになるので、考えるきっかけができる、というのは1つ大きなところだと思います。結果をすべて鵜呑みにするわけではないのですが、普段自分から見えている様子と違ったり、逆に見えているままだったりするなかでメンバーは何を考えているのだろうかと考える時間が増えました。

もともと私は、メンバーに対して「こうなってほしい」、「業務はこうあるべきだ」など、たくさん伝えるようにしていた方なのですが、試行錯誤のなかでスタイルを変え、今はどちらかといえば、話を聞くということを優先するようにしています。人にはいろいろな価値観があるので、それを変えることは難しい、私にできるのは環境を整えてあげることなのだと、今は思っています。特に、本人がやりたいことに対して、邪魔をしない、ということが大事なんだと思います。

こうした考えになる過程では、他部の先輩マネジャーと話すなかで刺激を受けたということも大きく影響しています。その方のチームは、私から見るととても雰囲気が良さそうに見えますが、先輩マネジャーがいろいろと悩まれているという話を聞いて。より良いチーム作りに向けて試行錯誤している姿を見て、マネジメントの在り方を考えるようになりました。

INSIDESが入ってからの変化としてもう1つ思うところでいえば、経営的な視点からの課題をあれこれと考えるようになったことです。メンバーを良い状態にしてお客様からも満足いただける状態をつくろうとすると、おのずと現場の視点からだけで考えていても行き詰まります。

メンバーをどうマネジメントすればよいか、というのは立場によって答えも違うように思っています。私たちの仕事は対クライアントワークですので、クライアントの視点でいえば、要望に対しては全力で応えていきたい、という思いが強くあります。一方でメンバーを預かるマネジャーとしての視点から見ると、やはり社員がよく離職してしまう状況というのは具合が悪いし、何よりもメンバーみんなが活力をもって働いてほしい、と思います。どうすれば、これらを両立させていくことができるのかを模索してくなかで、おのずと経営の観点から物事を考えるようになりました。

久嶋さんとは、最初はINSIDESの結果などをめぐっていろいろと意見がぶつかるようなやり取りもあったのですが、今では、組織や会社の未来について率直に意見を言い合えるようになりました。当社には長らく、人事、特に教育や組織といったことに関わるようなポジションはなかったのですが、久嶋さんがこの会社を良くしよう!と頑張ってくれていることを今はとても頼もしく思っています。

検討プロセス・実行施策

上司と部下のコミュニケーションの質を改善するためINSIDESを真っ先に導入

ピープルアナリティクス・DX・文化の浸透・マネジャー育成など、やりたいことはいくつもありましたが、私が最初の一歩に選んだのは「サーベイ」の実施でした。まずは、社員が何を思ったり考えたりしているかを知りたかったからです。サーベイによって、びっくり離職が実はびっくりではなく、「もっと成長できる環境に移りたい」などの明確な理由があることが分かってきました。コミュニケーション不足で、離職理由に気づいていなかっただけなのです。

数あるサーベイのなかでもINSIDESを選んだのは、「上司と部下のコミュニケーションが足りていないことが原因では?」という仮説を立てたからです。当時は1on1を実行しているマネジャーも少なく、上司・部下間の対話が不足していました。マネジャーと部下が日頃からよく話していれば、少なくともびっくり離職はなくなるはずだ、と考えました。離職自体も減るでしょう。若手社員も、きっと少しずつ本音を話してくれるようになります。私には、マネジャーにINSIDESという武器を渡して、対話を重ねながら、部下の働きがいや働きやすさを高めてほしい、その結果として離職を減らしたい、という想いがありました。

そこで2021年6月、私は新入社員を対象にINSIDESのトライアルを行いました。9月以降は役職に就く前までの職階の60名ほどを対象に、3カ月に1度のペースでINSIDESを実施しています。

風土改革のためINSIDESと並行して「個別面談」や「読み合わせ会」を始めた

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最初は、やはりなかなかINSIDES導入の意味を理解してもらえませんでした。例えば、半数以上が「窮々」と「悶々」のチームがあったのですが、マネジャーは改善策を示そうとしませんでした。「『淡々』で何が悪い。自分も淡々だ。淡々くらいがちょうどいい」と持論を語るマネジャーもいました。

そこで私はINSIDESと並行して、風土改革を始めました。まず、私自身による「社員全員との個別面談」をスタートしました。体調・繁忙度・やっている仕事の内容・上司とのコミュニケーションなどについて、社員に自由に話してもらう場です。保健室や駆け込み寺のようなところをイメージしており、相手のタイプやメンタリティに合わせて、細かくコミュニケーションを工夫しています。個別面談の結果は、マネジャーにフィードバックしています。現在も、全員との個別面談を半年~1年に1度行っています。

また、マネジャーを対象にした「読み合わせ会」も始めました。読み合わせ会では、INSIDESの結果レポートをどう見たらよいか、全社傾向や部署ごとの特徴に加え、特に気になっているメンバーについては個別で見方をレクチャーしています。1on1のヒントや、個別面談フィードバックの活用方法なども伝えています。読み合わせ会はINSIDESの活用度を高め、マネジャーの意識を変えるために、継続して行っています。

成果・今後の取り組み

多くのマネジャーが部下育成に前向きになり1on1を実施するようになった

2023年の日本SPセンターは、私が入社した3年前とはかなり違う会社になっています。INSIDESはすっかり定着し、年間取り組み目標に自主的にINSIDESの指標を入れてくれるリーダーも出てきています。また、INSIDES対象外だったチーム長クラスも「自分も受けてみたい」と積極的な姿勢を見せてくれるようになり、トライアルでの受検にも展開しています。

何よりも、多くのマネジャーが部下育成に前向きになっています。例えば、私にマネジメントスタイルのアドバイスを求めるマネジャーが出てきました。読み合わせ会では、当初は私が一方的に話していましたが、最近はマネジャーたちが結果レポートを事前に確認したうえで、次々に問いを投げかけてくれるようになりました。「ここだけの話……」と深い相談を持ちかけてくれるマネジャーが増えているのもうれしい変化です。1on1を実施するマネジャーがずいぶん増え、全社的にコミュニケーションの質が格段に高くなりました。ついでにいえば、新型コロナウイルス感染症の状況が落ち着いたこともありますが、飲み会などの場も増えています。

経営と人事の距離も近くなり、人事の意見が経営に届きやすくなりました。経営から「久嶋さんの話を聞かせてほしい」と言われることが増えました。この会社は経営陣がオープンで、特に社長が新しいことにチャレンジさせてくれるのです。社長の応援がなかったら、ここまでやってこられませんでした。また、皆が採用に協力してくれるようになり、採用活動も行いやすくなりました。私自身の働きやすさもかなり改善しています。

2020年以降の入社者は3年以内離職率がゼロ

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INSIDESの結果を真摯に受け止め、対応してくれるマネジャーが増えた結果、現場社員も変わりました。元気な社員、周囲との関わり方が積極的な社員が増えました。正直なところ、まだ「淡々」が多いという課題はあるのですが、「窮々」「悶々」は明らかに減っています。個別面談でも、皆がちょっとしたことを相談してくれるようになり、離職やメンタルダウンのサイン、ハラスメントのリスクに気づきやすくなりました。象徴的な事例が、最初は「『淡々』くらいがちょうどいい」と言っていたマネジャーのチームから、2023年に表彰者が何名も出たことです。このマネジャー自身も大きく変化し、部下一人ひとりをよく見て、よく話すようになりました。私はこうした変化を目の当たりにして、「人は変わるのだ!」と実感しています。

結果として、離職率は激減しました。2020年以降の入社者は、現時点(2023年6月)で3年以内離職率がゼロになりました。2017~2019年入社者の3年以内離職率が25~40%ほどでしたから、激減といってかまわないでしょう。

今後は、INSIDESを足がかりに、他のやりたかったことにチャレンジしていきます。第1弾として、人事DXの構築をスタートしました。これが完成すれば、INSIDESデータと人事データを掛け合わせて、人事施策に反映できるでしょう。また、次世代リーダー育成や階層別研修などの準備も進めています。実は、私はこれからプロ人事として独立するのですが、日本SPセンターには組織開発や研修、採用などこれまでと同じように関わっていきます。もっともっと働きがいのある会社、働きやすい会社に変えていきたい、と思います。

企業紹介

株式会社日本SPセンター
人びとが何を求めているのかを見出す力。伝えるべきことを伝え、うごかす力。日本SPセンターはその両方で、企業の目的達成に貢献するマーケティング&クリエイティブエージェンシーだ。1967年の創業以来、生活者が知りたい情報を、より適切に伝えるにはどうするべきかを考え続けてきた。成果に貢献する広告・販促の制作実績が評価され、国内最大手企業との取引が長年継続している。ターゲットを明確にするマーケティングリサーチから、求めるアクションを引き起こす戦略の立案、成果につながるコンテンツの制作、そして、継続的な運用の改善と最適化まで。これらすべてにおいて、的確なソリューションを提案する。

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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