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CASES

INSIDESとSPIを活用した新卒オンボーディング施策
データと感性の掛け合わせが、ボタンの掛け違いをなくす

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背景・課題

若手時代、現場で「仕組み化」やリーダーシップを学ぶ

塚本尚希様

私がバンダイの人事部にきたのは3年半ほど前のことです。それまではグループ会社で、アミューズメント施設の支配人や人事、総務などを経験してきました。

支配人として猛烈に働いていた20代後半、体調を崩して休んでしまった時期がありました。自分が1人で何とかしなければ、と気負いすぎてしまっていたのかもしれません。しかし、休んでいる間も、みんなが頑張って施設を運営してくれ、大きな問題は起こりませんでした。これは、当時の私にとっては大きな気づきになり、「みんなを信じて任せていいんだ」ということを実感しました。そして、「任せられる人を育てること」「任せられる仕組みをつくること」を深く考えるようになったのです。

現場でさまざまなマネジメントにもチャレンジしました。あえて強権的なリーダーを演じてみたり、オヤジギャグを飛ばす気さくなリーダーを演じてみたり。一番結果が出ないのは強権スタイルで、数字が下がって焦っているときにアルバイトを一喝してしまったこともありました。アルバイトの学生から「塚本さん、このままじゃダメです。変わってください」と訴えられた苦い記憶もあります。
最も結果が出たのは、部下の声を吸い上げるフラットなマネジメントスタイル。ちょっとした雑談や冗談から、優れたアイディアが生まれることもありました。こうした試行錯誤の結果「塚本の下で人が育つ」と評価され、人事部に異動することになったのです。

検討プロセス・実行施策

新入社員が増え、現場を巻き込むオンボーディング施策の必要性を痛感

塚本尚希様

現在は新入社員育成及び人財育成に注力した研修全般を担当しています。節目節目で新入社員とOJT担当、現場の上司と面談を行うだけでなく、日頃からTeamsで新入社員の悩みを直接聞く仕組みをつくりました。バンダイ本社のある駒形の名を借りて「駒形の父」と名乗り、親のように本音で相談できる存在を目指しています。

しかしながら、新入社員の人数は年々増えていきます。50人までは何とか乗り切りましたが、60人を超えるといよいよ全員を細かくフォローするのは厳しくなってきます。以前体調を崩してしまったときのように、1人で頑張りすぎてしまっても長続きしません。この先はより一層現場を頼り、OJT担当や上司にフォローを委ねていく必要がありました。

一方で、バンダイには経験や肌感覚を尊重する風土があり、ともすると新入社員との関わり方は属人的になりがち。OJT担当者はできるだけ新入社員と年齢が近い社員にしていますが、部署によっては40代・50代ということもあり、新入社員と価値観の相違も少なからずあると思います。そのため、現場に新入社員のフォローを委ねるにあたっては「仕組み」を構築する必要があると感じていました。

成果・今後の取り組み

「私が新入社員なら受けたい」という人事メンバーの一言がアセスメント・サーベイ導入を後押し

塚本尚希様

現場を巻き込んだ新入社員育成の仕組みづくりの一環で、適性検査としてSPI、コンディションの把握ツールとしてINSIDESを導入しています。最初にINSIDESを薦められたとき、結果がOJT担当者と現場の上司に開示される前提で、新入社員たちが本音で回答してくれるのか、実は半信半疑でした。

導入を後押ししたのは、当時入社5年目だった人事メンバーの声です。「私も新入社員時代、こういったサーベイで状態を見てほしかった」と聞いて、上司や先輩に自分の心のうちを理解してほしいと願う新入社員の気持ちを知りました。私自身、新入社員の立場ではなく、上司の立場で物事を見てしまっていたのかもしれません。

一方で、社内にはアセスメント・サーベイの実施に対して「ちょっと甘やかしすぎでは」という声も。私も毎月のようにチェックするのは過保護かなと思いましたが、四半期に1回は「定点観測」が必要なのではないかと考えたのです。

いずれにせよ新入社員育成支援に「定量的なデータ」は不可欠だと思っています。新入社員、上司・OJT担当がそれぞれに悩み、想いを抱えているなかで、客観的な手がかりがないと、話の着地点が見えないままに空中戦になってしまいます。結果として、弁が立つ者の意見が通ることになるのは望ましくありません。人事面談などで効果的にフォローするためには、手がかりとなる定量的な情報と定性的な情報の両方が必要であると感じていました。

アセスメント・サーベイ結果を現場にフィードバックするのに先立ち、結果を人事側で確認しました。結果を見て感じたのは、私がすでに持っていた定性的な情報の裏付けになっていたこと。日常で悩める新入社員から直接相談を受けることも、現場の先輩から「あの新入社員、少し心配です」という話がくることもあります。それらの情報が、アセスメント・サーベイ結果にも表れており、「やはりか」と確信しました。さらに、新入社員の設問に対する答えから、具体的に悩んでいることも網羅的に分かるため、フォローに入りやすいというメリットもありました。

現場に結果を伝えるにあたっては、上司向けに丁寧なガイダンスを行いました。何の説明もないまま新しい施策をしても、対象者が誤解をしたり、間違った解釈をしたりする可能性があるからです。それでは本来の成果は得られません。

加えて新入社員とOJT担当には、上司とは別のプログラムを用意しました。SPIを使って相互理解のための合同研修を実施。さらに横のつながりをつくるために、Teamsで新入社員とOJT担当それぞれのチャットルームを開設。同じ境遇同士でコミュニケーションを取れるだけではなく、人事からも「OJTの基礎知識」「新入社員が陥りがちな壁」「異なる性格との関わり方」などといったセルフマネジメント方法や、新入社員育成に役立つ情報を週1回ペースで発信しています。

新入社員とOJT担当の「取扱説明書」があればボタンの掛け違いがなくなる

今回の施策で私が期待したのは、新入社員とOJT担当、現場上司の「ボタンの掛け違い」をなくすことです。現場にいたころの私は、少しのボタンの掛け違いが原因で、部下との関係がギクシャクしてしまった経験があります。最初の段階でソリが合わないと感じたり、誤解したりすると、なかなかそこから抜け出すことができません。そうならないよう、お互いの「取扱説明書」が必要だと思うのです。

今回の施策を通じて、それぞれの立場や個性への相互理解が進み、望ましい関係性が生まれつつあります。例えば、「先輩とこれからうまく関係を築いていけるか不安です」と言っていた新入社員が、合同研修後に「先輩の考えを理解することができるようになった」とコメントしたり、OJT担当が「何かあればいつでも頼ってほしい」と新入社員に本心を伝えたり、関係性に変化の兆しが表れています。

私自身も今回の施策を経て、新入社員との向き合い方が変わりました。例えば、適性検査で「結果重視タイプ」だと分かった新入社員に対しては、要点をダイレクトに話すなど接し方を変えています。私も「結果重視タイプ」なので、どのようなフィードバックを求めているのかイメージしやすいのです。このように前提理解があると、どんな仕事もうまく進みやすくなると思います。

ソリューションプランナーの声

HRアセスメントソリューション統括部
ソリューションプランナー 中田 樹里

今回の取り組みは、感性とデータを織り交ぜた「現場で実装できるオンボーディングの仕組みづくり」がテーマでした。これまで経験と高い人間力を頼りに新入社員の育成をされてきたバンダイ様に、データの活用を通じて客観的な視点を加えることで、より一人ひとりに合わせた育成が実現できるように、と意図して設計しました。

現場で実装できる仕組みの実現のために、塚本様と私たちがこだわったのは下記3点です。
(1)横・縦のつながりで使える共通言語の提供
(2)研修後の継続的なインプットで実践を促進
(3)負担や孤独を感じさせない現場のマネジメントフォロー

上記(2)(3)について、上司の方へのフォローとしてはINSIDES相談機能を活用して、マネジメント上の不安や不明点を相談いただけるようになっています。OJT担当者には、毎週新入社員育成に関するコンテンツを配信し、実践を促進できる仕組みにしました。
また、毎サーベイ回答後は弊社から人事の方々へ新入社員の状態をご報告したのち、必要ならば人事から現場へ連携という形を取っており、現場と人事、感性とデータのバランスが取れた「新入社員オンボーディングの仕組みづくり」を進めています。
塚本様はじめ人事の皆様、現場の皆様と関わるなかで、バンダイ様が大事にされている「何もしないのは0点、失敗は50点」が体現されているように感じます。試行錯誤しながらも、歩みを止めず行動していく皆様のお姿に私はいつも勇気づけられています。
本取り組みはこれからより進化していきますが、この取り組みに携わることができて非常に嬉しく、誇りに感じております。

過半数から人事施策が支持されれば、クチコミで広がる

私は今回の取り組みを始めるにあたって、まず「51%の支持を得ること」を目指しました。人材育成やマネジメントには確実な正解はないなかで、全員に賛同される案を目指しても中途半端になるだけで、なかなか良い取り組みは生まれません。新しいことを始めるときにはさまざまな意見がつきものですが、それでも本当に良い取り組みであれば、過半数の方は賛同してくれるはず。そして、賛同者が実感値を持って「この仕組みはすごくいいよ」とクチコミで広げてくれることは、人事が声をあげることよりも効果的です。

今回の取り組みは、合同研修のアンケートの結果がかつてないほど高い満足度であったり、INSIDESを新入社員だけではなく組織全体で利用したいという声が複数部署からあがったりと、とても手応えを感じる結果となっています。今後、これをきっかけに当社の育成文化がより高いレベルに発展していくのではないかと期待しています。

また、定量データを活用した育成の「仕組み化」は、「見える化」にもつながります。例えば、ロールモデルとなる活躍をしている社員が、どんな特徴を持っているのか、データをもとに後追いできるようになるはずです。適性検査でもこの項目が高い人は伸びるなどの手がかりが見つかると思います。さらにそれを採用に生かせば、当社にマッチした人材を採用できる可能性も高まるでしょう。

一連の取り組みを通じて私が願うのは、本来活躍するはずだった新入社員が埋もれてしまうことや、退職することを防ぐこと。将来、会社を引っ張る逸材を発掘しつつ、逸材が持つ能力を開花させられる環境も整備していきたいです。

企業紹介

株式会社バンダイ
バンダイナムコグループにおけるトイホビー事業の事業統括会社として、国内外における事業戦略を策定・実行するとともに、多彩な商品・サービスを人々に提供している。「夢・クリエイション~楽しいときを創る企業~」を理念に掲げ、玩具、カプセルトイ、カード、菓子・食品、アパレル、生活用品などの企画・開発・製造・販売。1年間の総商品化点数は約1万4500点にのぼる。

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