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1on1の形骸化を防ぐためにINSIDESでメンバーの状態を「見える化」データを使い「思い込み」のマネジメントを減らす

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背景・課題

社員満足度は高いものの、コミュニケーションに改善の余地があった

高山:当社は乗用車・商用車など自動車分野、住宅・工場・オフィス関連分野で、デンソーおよびデンソーテン製品をはじめとするさまざまな製品の販売、サービス業務を行う企業です。親会社デンソーの販売会社としてスタートし、地域に密着した営業展開をするために2002年に分社化したのち、2012年と2019年の2度の統合を経て現在に至ります。そのため、それぞれ異なるカルチャーで育ってきた多様な価値観を持つ社員の集合体ともいえる組織です。

定期的に実施している社員満足度調査では、概ね良い結果が出ていました。しかしながら内容を詳しく見てみると、コミュニケーションに課題が見受けられたのです。また、ここ最近は休職や離職もやや増加傾向にあり、より良い組織を目指すうえで、コミュニケーションを活発にして、相互理解を深める取り組みが必要だと感じていました。

江口:ちなみに、私は再雇用で人事に配属されています。それまで営業や支社長などの経験はありますが、人事としての経験はありませんでしたので、人材育成や組織開発をテーマとするセミナーなどに参加し情報を集めていました。そのなかで1on1ミーティングを活用した他社事例に触れて、当社でも取り組みを浸透させられないかと考えました。

忙しいプレイングマネジャーの意識をメンバー育成に向けたい

背景課題

江口:当社が目指す組織像のスローガンは、「明るく、楽しく、元気よく」です。それと照らし合わせると「1on1」という呼び名は少し堅い感じがしました。より当社らしい取り組みにする目的で、「わくわくトーク」という親しみやすいネーミングに変更しています。

スピード感を持って「わくわくトーク」を浸透させるためには、トップの理解が不可欠です。そのため、幹部会などで取り組みを推進するように号令を出してもらうことに。トップに「わくわくトーク」の必要性について理解してもらうために、協力会社から直接説明してもらう機会をつくったことも、取り組みを進めるうえで効果的でした。念入りな準備をしたおかげで、「わくわくトーク」が一施策にとどまらず、会社のテーマとして取り組まれるための道筋をつくることができたのです。実施に先立ち、取り組みの背景やねらい、期待される効果を、幹部とマネジャー向けに2時間かけて丁寧に説明しました。その説明の場では、経営トップからも取り組みに対する想いを語ってもらいました。

安藤:施策を始めてからしばらくした後、マネジャーとメンバーそれぞれにアンケートを行い、マネジャーとメンバーが対話を通じて何を思ったのか、それぞれの認識にズレがないかなどを調べました。「わくわくトーク」で有意義な対話が行われている一方で、業務に追われて優先順位が低いケースがあったことも事実です。忙しいプレイングマネジャーが大半で、メンバーを育成する時間をしっかりと設けているのは2割から~3割程度という実態も見えてきました。そこで、マネジャーの意識向上を目的として「わくわくニュース」を発行。アンケート結果やマネジャーの取り組み事例、そのほか「アンガーマネジメントとは?」などマネジャーが関心を持ちそうなトピックを紹介し、「わくわくトーク」の実施率向上に役立てています。

検討プロセス・実行施策

1on1の形骸化を防ぐために、メンバーの状態を可視化するINSIDESの導入を検討

施策の全体像

江口:情報収集の過程で、すでに1on1を実施しているものの、形骸化している企業も多いと聞いていましたし、「5年は続けないと定着しない」という意見もありました。定着させることが難しい施策であれば、先回りして対策を打っておこうと考えました。その対策の1つとして検討したのがHR Techの活用です。マネジャーはメンバーと対話すると、それだけで仕事をした気分になりがちですが、本当に有意義だったかどうかは感覚的に判断することしかできません。そこでメンバーの状態を可視化し、1on1での対話方針に関してアドバイスが得られるINSIDESの導入を検討することにしたのです。まずは関東支社でトライアルを実施しました。

高山:私は長年、営業現場でキャリアを重ねており、現場には精通しています。INSIDESのトライアルを実施した当初は、人事部ではなく現場にいました。だからこそ痛感したのですが、トライアルの結果はショックなものでした。特に忙しい部署には窮々・悶々とした気持ちで働く新人や若手社員がいることが分かったからです。その部署のトップも想定外の結果を目の当たりにして危機感を覚えたようです。つまり、これまではメンバーを、「思い込み」や外から見て感じる「なんとなく」のイメージで捉えており、本人の本音や心の内が見えていないことが分かりました。だからこそ、客観的な共通指標をもとに社員の心の状態を共有することが重要なのです。

データの読み方、捉え方、メンバーへの対応の仕方を丁寧に学ぶ

安藤様

安藤:経営陣とINSIDESトライアルの結果を共有すると「これはやらないとダメだね」という話になり、導入が決定しました。しかし、せっかく社員の状態が可視化できるようになっても、情報を正しく読み取ることができなければ、現場での活用が進みません。そこで、リクルートマネジメントソリューションズにお願いして、マネジャーを対象に導入ガイダンスを実施しました。実際の結果を配布したうえで、その結果の読み方、捉え方、結果を受けての対応の仕方などを学び、考えてもらうという内容です。メンバーの育成に時間を割けていないマネジャーが、メンバーの状態を知って危機感を抱き、マネジャーとしての当事者意識を高めるきっかけになっています。

江口:INSIDESの実施は年3~4回です。年に複数回実施するのは、結果を次のアクションにつなげてもらい、メンバーの改善、ひいてはチーム、部署の改善の経過を追うためです。スタートから1年半ほど経ち、効果が出始めています。INSIDESの結果が、マネジャーたちの共通のマネジメント指針としても役立てられています。取り組みの甲斐があり、苦しい状態にあった社員が減少したことが、データから読み取れるようになりました。

成果・今後の取り組み

支社での成功事例をデンソーソリューション全体に広げていく

安藤:最初に取り組みを始めた関東支社の成功を経て、これからデンソーソリューション全体に広げていくところです。しかしながら、いきなり全社員に広げるのではなく、まずは「わくわくトーク」とINSIDESの必要性を実感してもらうために、部長と課長という組み合わせで半年間、先行して実施することにしました。並行して、各支社、支店で取り組みのメイン担当とサブ担当を決めてそれぞれ事務局を置きました。そこに本社の事務局である私たちが訪問し、働きかけを行うことで有機的な事務局のネットワークをつくっています。それぞれが協力しながら取り組みを進めていく体制を築きました。全社展開を実現するうえで、各支社・支店の主体的な取り組みの基盤が欠かせないからです。

江口:基盤が出来上がってきたことを確認し、係長以下の一般社員にも広げた結果、デンソーソリューション2000名のデータが集まりました。その際、INSIDESの活用支援担当の方が、データの出し方や分析の仕方、その役立て方などを解説してくださるなど、さまざまなサポートをしてくれました。そこで得た情報を踏まえ、資料にまとめて社長をはじめとする幹部を対象にした報告会で、その有効性をプレゼンしました。

INSIDESで得たデータに対するリクルートマネジメントソリューションズの解説の納得度が高いため、「わくわくトーク」の定着だけではなく、組織開発の取り組みの共通指針としても、この結果を役立てられるのではないかと期待が高まっています。このように、「わくわくトーク」とHR Techを組み合わせた取り組みを力強く進めて一定の成果を出せているのは、経営層のコミットを上手く引き出せたからだと考えています。そのために事務局が絶えず経営層を巻き込むために働きかけることが欠かせません。

窮々、悶々としている人が元気になれば、それだけで業績は上がる

成果今後

高山:一方で、課題もあります。取り組みに対する理解がある支社・支店では「わくわくトーク」がすっかり定着しましたが、熱がまだ弱いところがあることも事実。現状、定着できていないところで、どのように定着させていくべきか考えているところです。

安藤:もう1つの課題は、データを読み取り、分析して、活用する力をつけることです。データの使い方によって、その効果は大きく異なります。リクルートマネジメントソリューションズの支援を受けながら、データを分析し、有効活用するための力を養っていきたいと考えています。

江口:データの使い方によっては「キャリア自律」や「組織開発」などのテーマでも役立てることができるかもしれません。INSIDESは新しい機能も都度アップデートされていくので、こうした機能が開発されることにも期待したいと思っています。

「わくわくトーク」とINSIDESの取り組みが定着すれば、それは業績向上にもつながります。なぜなら、窮々、悶々の人が減れば、個人のパフォーマンスが向上し、ひいてはそれが組織のパフォーマンス向上につながるからです。そのためにも引き続き、取り組みを定着させ、深化させるための働きかけを継続していきたいと思います。

企業紹介

株式会社デンソーソリューション
グローバルに事業展開を行っているデンソーグループのなかで、デンソーソリューションは国内外アフターマーケット市場における販売・サービス業務(取付・保守・修理)・マーケティングを担う。
変化の早い事業環境においてスピーディに対応する体制をつくることを目的に、2012年4月に国内8つの販売会社と空調設備会社を統合し、前身の「デンソーセールス」を設立。
(変化の早い事業環境においてスピーディに対応する体制をつくることを目的に、2012年4月に国内8つの販売会社と空調設備会社を統合した。)
顧客ニーズも多岐にわたるため、「時代とともに変化するお客様の困りごとを的確に捉え、前例のないことへ挑戦し、早いスピードで実現する」を目標に事業を展開している。

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